『「学力」の経済学』からみる教育的知見(1)
こんにちはつくば国語塾の塾長です。
今回からは、昨年発売され教育分野でベストセラーとなっている『「学力」の経済学』という本から見いだされる教育的な知見をご紹介します。
この本の特筆されるべき特徴は、教育分野での言説が科学的な知見に基づいておらず、単なる慣習となっているだけで、正しいこととして流布されている点を鋭く暴いていることです。
教育のに関わる言説は専門家だけでなく、一般の人も発言する機会が多く、科学的な検証なしに一般化されます。特に日本ではこのことがひどく、筆者は警鐘を鳴らしています。
この本は多くはアメリカの経済学者の論考をベースに近年20年間の教育に関わる経済理論を紹介しています。是非時間があれば読んで損はない本です。
さて、数回にわたってこの本で注目される家庭での教育的な知見をお伝えします。
今回は
子供を”ご褒美”で釣ってはいけないか?
です。
この本では「テストでよい点を取ればご褒美」と「本を読んだらご褒美」はどちらが実際の成績に効果的なのかについて比較しています。前者は結果(アウトプット)に対するご褒美なのに対し後者は「宿題をする」「学校に遅刻せずに行く」「本を読む」などのインプットに対するご褒美の例です。
実験の結果効果的だったのは後者(「本を読んだらご褒美」)でした。
つまりアウトプットではなくインプットに、遠い将来ではなく近い将来にご褒美を与える方が効果的という与え方の問題であることがわかりました。
また、そもそも金銭をご褒美にすることは、子供に対して教育的配慮としてよいことなのだろうかという疑問があります。著者は
「教育経済学的に正しい「ご褒美」の設計は過去の研究蓄積をみる限り、「ご褒美」の設計を正しく行えば、「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせることなく、学力を向上させられるはずです。」
と述べています。
ご家庭で注意したいのは、子供さんと一緒に学習するスタンスをとりながら、学習に対するご褒美は目先の成果だけに限定して行うことが重要なようです。
普段子供さんの勉強に興味がなく、ニンジンだけをぶら下げるつもりで、「テストで100点取ったら1万円あげる」などの言動がほぼ何も意味しないことは自明です。