つくば国語塾

つくばにある小・中・高・既卒を対象とした国語(他に小論文・AO推薦対策・英語)の塾です

つくば国語塾が目指す方向ーRST調査から見えること(5)

こんにちは、つくば国語塾の塾長です。

 

前回に続き、

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の中でも触れられている

 

 「大学生数学基本調査」の問題を見てみます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー問題 偶数と奇数をたすと,答えはどうなるでしょうか.次の選択肢のうち正しいものに
○を記入し,そうなる理由を説明してください.


(a) いつも必ず偶数になる.
(b) いつも必ず奇数になる.
(c) 奇数になることも偶数になることもある.

 

正答例 正しい選択肢は(b)である.正しい理由の記述に関しては,複数の検定教科書を
参考に,調査対象の大学新入生が中学 2 年次に受けたであろう授業における類似問題の正答例に基づいて,本設問での正答例を以下の通りに定めた.


偶数と奇数は,整数 をもちいて,それぞれ2m、2n+1 と表すことができる.そし
て,この 2 つの整数の和は2m+(2n+1)=2(m+n)+1となる. m+nが整数なので,この和は奇数である.

 

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この図の国立S、国公A、国公B、私S、私A、私B、私Cは前回説明した通り、入学偏差値で区分されたものです。(大学の特定はされていません。)

 

この問題を筆者は

この問題を「人生を左右する問題」と呼ぶようになりました。と述べています。

 

国立Sクラスのグラフだけが他とはまったく異なる形になっています。もちろん、こんな簡単な問題は東大や京大の入試には出題されません。それどころか、私大B、Cクラスを含め、どの大学でも出題されないでしょう。にもかかわらず、こんな問題であからさまな差がつくのです。

 

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筆者はどうしてこの問題を「人生を左右する問題」と言っているのでしょうか。それは、国立Sクラスと他のカテゴリーの間に、大きな学力の断層があり、この国立Sクラス(及びこの問題を解答できる数学基礎力を持つ層)エリート層として暗に認定しているからでしょう。

 

もちろん、この問題がとければ、エリート層になれると単純に言っているわけではありません。このレベルの問題で断層が生まれるとするなら、基礎的な学力の差が決定的だとする考え方が重要なのだと思います。

 

更に、筆者は前回の問題、今回の問題は「論理力」と「読解力」に関わる問題だと指摘しています。数学という教科の問題ではなく、本来読む力とそこから発生する推測を含めた論理の力の重要性なのだと思われます。

 

以上のことから二つの仮説を申し上げると。

 

①読解力の基礎の一部である「論理」は中学数学をマスターすることが肝要。

 

②調査でカテゴライズされた国立Sクラスのレベルに達することがエリートの道である。

 

筆者新井先生の主張は「中学卒業までに教科書を読めるようにしよう」であり、ボトムの底上げが趣旨である限り、上記の結論は不本意なのは承知していますが.......。