つくば国語塾が目指す方向ーRST調査から見えること(4)
こんにちは、つくば国語塾の塾長です。
シリーズ第4回目
今回は、やや本論からはずれているように見えますが、論理的思考は何を学べばいいかについて考えます。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の中でも触れられている
「大学生数学基本調査」の中の問題です。実際の報告書は以下にあります。
http://mathsoc.jp/publication/tushin/1801/chousa-houkoku.pdf
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問題 次の報告から確実に正しいと言えることには○を,そうでないものには×を, 左
側の空欄に記入してください.
公園に子供たちが集まっています.男の子も女の子もいます.よく観察すると,帽子をかぶっていない子供は,みんな女の子です. そして,スニーカーを履いている男の子は一人もいません.
(1) 男の子はみんな帽子をかぶっている.
(2) 帽子をかぶっている女の子はいない.
(3) 帽子をかぶっていて,しかもスニーカーを履いている子供は,一人もいない.
(1)の答えは○,(2)の答えは×である.さらに,「スニーカーを履いている男の子は一人もいません」という文と併せても,「帽子をかぶっていて,しかもスニーカーを履いている女の子がいる」可能性を否定できないため,(3)の答えは×である.
偏差値群による上記問題の正答率
国 S 国公 A 国公 B 私 S 私 A 私 B 私 C 全体
正答率% 86.5 66.8 60.6 66.8 56.9 44.5 41.6 64.5
系による上記問題の正答率
理工 文学 社会科学 教育 保健衛生 学際 混合
正答率% 70.1 51.5 68.6 58.9 56.5 50.6 61.1
調査を受けた学生が主として所属する大学・学部を,ベネッセコーポレーション
のマナビジョンが提供する偏差値分類(国公立 S,国公立 A,国公立 B,私立 S,
私立 A,私立 B,私立 C)および系分類に従って分類した上で,分析を行った.
偏差値が高いほうから S,A,B,C である.国公立 S 群には,公立大学のサンプルは
含まれない.
上記問題の正答率は64.5%であり,期待される正答率(90%)を大きく下回った(表 3).問1-1同様に,文学系・教育系・保健衛生系・学際系では正答率が 60%を割り込んでおり,大きな課題が残る。
アンケート項目から,正答に近くかつ誤答から遠い因子(および正解から遠くかつ誤答
から近い因子)をそれぞれ絞り込んだ.その結果,正答に近くかつ誤答から遠いのは,①国公 S・A 群,②数学記述式試験経験あり,③中学数学得意,なグループである.逆に,正解から遠くかつ誤答に近いのは,①私 A・B・C 群,②数学記述式試験経験なし,③中学数学不得意,なグループであることがわかった.
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上記の問題は、高校数学の集合・命題の項の問題とも捉えられますが、数学とは無関係に常識的な論理的推論にあてはまる問題と考えられます。文系的な解釈をすれば、論理的な文章を読むときの基礎の部分に当たると考えることもできます。例えば公務員試験や法科大学院の適性試験にも共通して求められる資質です。
上記の事柄に経験を加味して、やや大胆に推論すると、中学数学程度までできるようになることが、論理的な思考のベースになっている可能性があります。
つくば国語塾が目指す方向ーRST調査から見えること(3)
こんにちは、つくば国語塾の塾長です。
シリーズの3回目は、前回ご紹介させていただいた
について考えてみたいと思います。
この本は4章からなり、RSTに直接関連しているのは第3章です。
3章の私が気になる部分は以下の部分です。(要約ではありません抜粋です。)
○中高校生の読解力が危機的な状況にあるということは、多くの日本人の読解力もまた危機的な状況にあるということだと言っても過言ではないと思われます。
○どこの大学に入学できるかは、学習量でも知識でも運でもない、論理的な読解と推論の力なのではないか。
○知らない単語が出てくると、それを飛ばして読むという読みの習性があるためです。
○中学1年生でRSTを受検することが、読み障害の早期診断、早期支援につなげられればと願っています。
○基礎読解力が低いと、偏差値の高い高校には入れない。
○その学校の教育方針のせいで東大に入るのではなく、東大に入れる読解力が12歳の段階で身についているから東大に入れる可能性が他の生徒より圧倒的に高いのです。
○もしかすると、多読ではなくて、精読、深読に、なんらかのヒントがあるのかも。そんな予感めいたものを感じています。
まとめると、
全国2万5000人を対象に実施した読解力調査でわかったことをまとめてみます。
・中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない
・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である
・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
・読解能力値は中学生の間は平均的には向上する
・読解能力値は高校では向上していない
・読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある
・通塾の有無と読解能力値は無関係
・読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない。
読解力をベースに学習を組み立てなければ、知力の向上は見られないことになります。
特に私たち指導者は読解を論理的な読解と推論を育てる方向で考えなければなりません。
上記の結果はつくば国語塾が提案していることと全く変わりがないことを強調しておきます。
つくば国語塾が目指す方向ーRST調査から見えること(2)
こんにちは、つくば国語塾の塾長です。
RTS(リーディングスキルテスト)の概要をご理解いただいたと思います。
最近この本が出ました。
教育に携わっている方なら小中学生の読解力の問題が深刻なのは了解済みだと思います。
論点整理は次回にさせていただくとして、のぞき見的に筆者のTwitterの発言を見ていくと..........。
〇東ロボを5年間やった素直な感想として、センター入試は非常によく練られているなぁ、と。「選択式=ダメ」「センター=知識を測っている」は単純すぎる図式だと思います。
〇2万5千人のリーディングスキルテスト、わかったことは、中学生の分散が非常に大きく、高校偏差値と高校1年生のリーディングスキルテスト能力値の相関が0.8もあることでした。
〇現状の高校教育では高校1,2年生の能力値に統計的有意な差はなく、事実上、中学3年のリーディングスキルテストの能力値によって進学できる高校の偏差値がほぼ決定されます。生徒は「自分はそれなりに読める」という意識なので、早期に診断をして誤読の癖などを修正するとよいと思います。
〇今回の調査は、科目としての国語力を測ったものではありません。教科書も国語と英語は用いていません。「事実について書かれた短文を正確に理解する力」を測っています。国語が得意かどうかと本調査の能力値との間に相関は特にはない、という結果です。また、読書が好きかどうかとも相関はなかった。
〇にもかかわらず、進学できる高校の偏差値との相関は0.8です。つまり、生活・読書・学習習慣とは関係ないのに、進学できる高校を決定するような能力値だということです。一方、中学で能力値が上がるという点で知能テストとは違います。
〇読書が好き・読書してる、と「事実に関する短文を正しくよむ力」は科学的には「関係ない」としか今のところ言えません。まぁ、大人でも同じような自己啓発本を月に三冊読んで読解力あがる気がしないし・・・読書の内容や質が関係するんでしょう。
〇「これほど多忙で疲弊している中学や高校が、なぜ2万人以上の規模で協力したのだろう」とは思いませんか?私に権力などないし、教育委員会は強制していない。これは現場の声です。こんなに教科書が読めてないのに、アクティブラーニングとかプログラミングとか英語とか無理ですとう声なき声。
現在の学校教育の中で読解力の養成が出来ておらず、読解力の差が学力の差として考えられる状況となっているとまとめられると思います。
つくば国語塾が目指す方向ーRST調査から見えること(1)
大学受験9カ年計画(国語編-補4)
こんにちは、つくば国語塾の塾長です。
大学受験のロードマップに加える可能性がある本を見つけました。
こちらです。
「日本語トレーニング」以前にある条件が許せば、一気に中学受験の体勢が整うこと
が可能となる問題集(参考書)です。
個性的な問題集・参考書は限定的ですが、特定の生徒さんにはまると強力な力を発揮します。